公開日:2020年5月18日
遺言書とは、自分の死後に残した財産を「誰に」「何を」「相続させる」のかなどを書き記しておく法律上の文書のことです。
遺言書は、個人は死後の自分の財産についても自分の意思で自由に決定することができるという遺言自由の原則から認められているもので、被相続人の意思を尊重して一定の事項につき死後の法律関係を遺言者の思い通りに実現することを法的に保障された制度です。
この遺言書が有効なものと認められるためには民法に規定されている遺言に関するルールを守る必要があり、それに沿って正しく作成しなければ遺言書は法的に無効となってしまうこともあるので作成にあたっては法律の専門家などに確認してもらう必要があります。
ここでは、遺言書を作る目的や遺言書の役割についてご説明します。
遺言書は縁起の悪いものではない
遺言書を書くというとなにか縁起の悪いものだと思う方もいらっしゃると思いますが、決してそんなことはありません。
遺言書は遺書とは違います。
死を目前にして自分の気持ちなどを書き記す遺書と違い、遺言書は自分にもしものことがあった時に備えて誰に財産を相続させるかを事前に準備しておくもので、状況が変われば書き直すという方も多くいらっしゃいます。
遺言書を作る目的は大きく2つ
遺言書を作っておく目的は大きく2つあります。
ひとつは自分が亡くなった後に相続で家族が争うことがないようにすること。
もうひとつは自分が望んだ相手に財産を渡すことができるようにすることです。
・家族の争いを防止する
・望んだ相手に財産を渡す
遺言書がないと、相続の時に誰が何をどの割合で相続するのかなどで揉めることがあります。
相続を機に今まで特に争いごとのなかった家族のみならず、仲の良かった家族までも相続分について争いごとが起こってしまうことがあります。
これは、相続財産の多い少ないに関わらず起こる可能性があるので、「相続財産があまりないからうちは安心」とも言い切れません。
遺言書を残しておくことで無用な争いを避けることができるかもしれません。
特定の人に財産を残したい場合は遺留分に注意
また、特定の人に特定の財産を相続させたいと思うこともあるでしょう。
遺産は、基本的には法定相続分に基づいて分けることになりますが、遺言書で残しておけば法定相続分に関わらず、特定の人に特定の財産を渡すことができます。
ただし、一定の相続人には「遺留分」といって、最低限の取り分が認められているのでいくら特定の人に相続をさせたいと思っていても、その通りにはいかないこともあるので注意が必要です。
遺言でできることとは?
遺言できる内容(法定遺言事項)は法律で決められており、主なものとして以下のようなものがあります。
- 相続分の指定・指定の委託
- 遺産分割方法の指定・指定の委任
- 遺産分割の禁止
- 相続人の廃除・廃除の取り消し
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺留分侵害額の負担の指定
- 遺贈
- 遺言執行者の指定・指定の委託
- 子どもの認知
- 未成年者の後見人
- 祭祀財産(さいしざいさん)の承継者の指定
この法定遺言事項以外の内容を遺言書に書いたとしても基本的には法的拘束力は生じません。
たとえば、子どもの結婚についての希望や自分の葬儀についての希望などの内容を遺言書に残したとしてもそれを守る義務はありません。
しかしだからといってこのような内容を遺言書に書いてはいけないわけではありません。
このような法定遺言事項以外の内容は付言事項(ふげんじこう)といいます。
むしろ付言事項として家族に対する想いや特定の財産を受け取れない人に向けて理由を説明することでマイナスの感情を与えないように説明することで家族に争いが起きないようにすることが期待できるため、付言事項として記しておくことは大切であると言えます。